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ジャズの歴史(3)

カンザスシティ・ジャズ


禁酒法時代のアメリカで、カンザスシティだけは、酒の利権を独占していた市議会議員トム・ペンターガストによって公然と酒場が営業しており、巨大な歓楽街として膨れあがっていました。

 

 

オールナイトで営業する酒場で演奏し続けなければならないジャズバンドは、ブルースの影響を強く受け、簡単なアレンジに即興演奏を乗せるかたちで発達します。

 

カウント・ベイシーが出演し、チャーリー・パーカーが通ったClub Remo

 

明け方に仕事を終えてもジャズマンたちは家に帰らず、ジャムセッションのバトルで腕を競いました。

 

ジャムセッションってなに?

 

ミュージシャンが集まって打ち合わせも練習もなしで演奏をすることだよ。即興演奏を楽しむんだ。

  

バトルってことは勝ち負けがあるんや

 

バトルはいつもしているわけではなくて、そうなるときがあるってくらいだけど、勝負をするときは、アドリブフレーズのアイデアが出てこなくなったら負け。同じことを繰り返したら負け。

 

観たい!!それ観たいやで!!!

 

カンザスシティではそれだけジャズがエキサイティングだったんだね。

 

映画監督ロバート・アルトマンは、そのジャムセッションを目撃したひとりでした。

1996年に公開された映画「カンザス・シティ」では、ロバート・アルトマンの記憶に基づいて、カンザスシティのジャズシーンが忠実に再現されています。

 


 

また、衣装からセット、演奏に至るまで、細心の注意を払って再現されたジャズライブのシーンは、ドキュメンタリーとして再構成され、映画「ロバート・アルトマンのジャズ(ROBERT ALTMAN’S JAZZ ’34: REMENBERANCES OF KANSAS CITY SWING/邦題スーパー・ジャム・セッション in Hey Hey Club)」として公開されました。

 


映画「カンザス・シティ」のジャズシーンを抜粋して再構成したドキュメンタリー映画です。痺れます。

 

この映画のバトルシーンがすごくかっこいんだ。僕もあの場所でピアノを弾きたいって思ったよ

観たい観たい!!柴田コウメイよ、王国の威信をかけて必ず勝つやで!!!

 

負けたらひどいめにあわせる気満々じゃないですか、国王。

 

負けたら呪いの平家蟹を食わせる。

 

平家蟹は壇ノ浦に生息する人面蟹です。ホンモノは怖いから絵でゆるしてね。

 

勝ったら陛下が平家蟹を食べるんですよ。

 

イヤーッ

 

禁酒法下では隆盛をきわめたカンザスシティでしたが、禁酒法が撤廃され、酒の利権を独占していた市議会議員トム・ペンターガストが特権を失うとともに、その繁栄も失います。

その頃には既に音楽の中心はニューヨークに移っており、カンザスシティのミュージシャンたちもニューヨークへと移動しました。

チャーリー・パーカー登場

カンザスシティでカウント・ベイシー楽団に熱中し、レスター・ヤングに憧れ、3~4年間もの間15時間の練習を続けていたサックス奏者チャーリー・パーカーがニューヨークに引っ越したのは1939年、ベニー・グッドマンがカーネギーホールのコンサートを成功させた翌年のことでした。

 

チャーリー・パーカー

 

やがて表舞台に現れたチャーリー・パーカーは、めまぐるしく動く複雑なコード進行と、通常のコードの構成音の上に9度、11度、13度等の音を乗せたきらびやかなテンション・コードから生まれる天才的なアドリブでニューヨークを震撼させます。

 

コード進行って楽譜に書いてある和音の記号よね。和音って作曲者が決めるものじゃないの?

 

もちろんコード進行は作曲者が決めているんだけど、編曲するアレンジャーが決めるものでもあるんだ。チャーリー・パーカーのコード進行は、それまでの音楽の常識を破ったものだったんだよ。

 

どんなふうに破ったの?

 

とにかく複雑で速い。たとえば、それまでは1小節に1つか2つだったコードが3つにも4つにもなったんだ。そのうえ、コードそのものにも今までにない音を入れていたんだよ。

 

ピアノだったら左手が大忙しや

 

左手が忙しいと、右手はもっと忙しい。そうするとジャズはどうなったと思う?

 

サーカスみたいな速弾きになる?

 

そう、チャーリー・パーカーの極限まで高められた即興演奏で、ジャズは踊れない音楽になった。白人がジャズに求めたダンスミュージックでも、甘いサロンミュージックでもなくなったんだ。

 

ジャズで踊ってた人たちはみんなびっくりしたやろね

 

チャーリー・パーカーたち黒人も、白人にわかってたまるかって気持ちでやってたみたいだね。即興演奏は、白人がジャズから取り除いた、黒人音楽の原点ともいえる特徴そのものだからね。

チャーリー・パーカーが作り出した新しいジャズは「ビバップ」と呼ばれ、モダン・ジャズの原点となりました。

「モダンジャズの帝王」マイルス・デイヴィス

 

ここからのジャズはマイルス・デイヴィスを追うだけで充分流れは掴めるよ。

 

マイルス・デイヴィス知ってる!昔タモリと対談してたやで!

 

タモリはマイルスデイヴィスをとても敬愛しているね。マイルスデイヴィスはモダンジャズの帝王と呼ばれているとてもすごい人なんだ

 

帝王と国王はどっちがえらいか言ってみなさい。

 

帝王のほうが強そうだね。

 

今夜は地下牢で眠っていただく。

 

 マイルス・デイヴィスはジュリアード音楽院を中退後、チャーリー・パーカーを訪ね、第一歩を踏み出します。

それから約一年間、マイルス・デイヴィスは、チャーリー・パーカーと暮らしを共にしながら音楽を研鑽しました。

クール・ジャズ 

 

チャーリー・パーカーと演奏するマイルス・デイヴィス。

 

チャーリー・パーカーの元で音楽キャリアを重ねていたマイルス・デイヴィスは、ビバップを追いかけている限りチャーリー・パーカーを越えることはできないと判断し、自分の音楽を求めて独立します。

超絶技巧と天才的な閃きを求められるビバップを越える音楽としてマイルスが選んだのは、ビバップでは軽視されていたアンサンブルでした。

1949年から1950年にかけて、天才アレンジャー、ギル・エヴァンスらとともにリリースした9重奏によるセッションは、ビバップのコード進行とハーモニーをビックバンド並のアンサンブルで演奏しながら、即興演奏を中心に据えない、まったく新しい音楽でした。

 

このセッションはSPレコードのシングル盤でリリースされるんだけど、7年後の1957年にLPレコードにまとめられて「クールの誕生」って題名で再発売されるんだ。

 

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そんなに売れたの?

 

売れたというよりも、影響が強かったんだ。天才的な閃きとか、超絶技巧とか、不確定な要素に頼らなくてもかっこいいジャズが演奏できて、しかも都会的で、クールなサウンドになるんだから・・同じような話、どこかで聞かなかった?

 

わかった!ポール・ホワイトマンや!!ニューオリンズの黒人ジャズをアンサンブルのスコアにして白人のダンスミュージックにしてたよね。

※ポール・ホワイトマンについては前回の「ジャズの歴史(2)」をご参照ください

 

さすが国王。マイルス・デイヴィスのこの九重奏は「クール・ジャズ」というひとつのジャンルになって、白人たちのモダンジャズ「ウエスト・コースト・ジャズ」に発展するんだ。

 

クール・ジャズに影響されて、チェット・ベイカーや、スタン・ゲッツ、デイブ・ブルーベックといった、白人のモダンジャズプレイヤーが現れます。

 

クール・ジャズ!!ビバップに続くジャズの新しいジャンルを作った記念碑的なレコードだったってわけやな。

 

『クールの誕生』は名盤中の名盤で、バークリー音楽大学でも、ビックバンドアレンジの授業では一番最初にこのアルバムを聴かされて勉強したよ。先生は、アレンジの勉強する人は必ず聴いて勉強しなければならないアルバムだって言っていたね。僕も授業で9重奏のアレンジを書いたよ。

 

たった9重奏なのにビッグバンドの勉強になるの?

 

うん。ピアノとベースとドラムを引いて管楽器は6本なんだけど、「クールの誕生」ではたった6本とは思えないほどサウンドが分厚くてビックバンドみたいな音が出ているんだ。つまり、ビックバンドはピアノとベースとドラムに管楽器6本の音を大きくするだけで完成するんだね。「クールの誕生」は最小限の楽器で最大限の効果を出すことに成功したアルバムでもあるんだ。

 

ハード・バップ 

 

マイルス・デイヴィスのクール・ジャズが白人のモダンジャズに道筋をつけたというのもすごい話やな。

 

うん、これがマイルス・デイビスの面白いところでね、クール・ジャズに反発した黒人たちによってまたアドリブ中心の、今度はビバップよりももう少しわかりやすいメロディックなアドリブのハード・バップっていうジャズが始まるんだけど、そのハード・バップを始めたのもマイルス・デイビスだったんだ

 

えっ

 

ハードバップのような黒人のモダンジャズをウエストコーストジャズに対してイーストコーストジャズって呼ぶんだけど、ウエストコーストもイーストコーストも始めたのはマイルス・デイヴィスだったんだ。

 

両方を制してたわけやな。まさに帝王や!

 

モード・ジャズ

 

ハードバップのトッププレイヤーとなったマイルス・デイビスは、モダンジャズから複雑なコード進行を排し、クラシックの教会旋法(モード)によるスケールで進行するモード・ジャズの名盤「カインド・オブ・ブルー」をリリースします。

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このアルバムに収録されている『So What』って曲があるんだけど、この曲に使ってあるコードはたった2つだけなんだ。 

 

複雑なコード進行が特徴だったビバップの正反対の位置に来たわけやな。

 

ワンコードで延々と演奏するなんてロックみたいだよね。というわけかどうかは知らないけれど、モードの次のマイルスは、ロックとジャズの融合をはかりはじめます。

 

ええっ、どこまで行くんやマイルス・・・

 

フュージョン

  

マイルス・デイヴィスの音楽活動は、しばしば、電化前と電化後に大きく分けられて語られています。

電化後とは、マイルス・デイヴィスがエレクトリックな楽器を使い始めたことを指しています。

電化後、マイルスはロックとジャズを融合させ、大音量のエレキ楽器を8ビートのリズムで演奏しました。

 

これがすごい賛否両論でね。今でも電化マイルスは興味ないってジャズファンがいるくらいだよ。

 

ロックとは何が違うの?

 

ロックには使わないジャズの複雑なコードとコード進行を使って、ロックの楽器とリズムで演奏したんだ。

  

アドリブもバッキバキ?

 

それはもうバッキバキにアドリブしているね。ロックのような、他の音楽ジャンルと融合したジャズをクロスオーバーといって、80年代くらいからフュージョンとも呼ばれるようになるんだけど、そのフュージョンを始めたのもマイルス・デイビスだったんだ

 

フュージョン知ってるで。カシオペアとかスクエアとかのあのフュージョンやろ。

 

そう、あのフュージョン。

 

全部じゃん!!ジャズ全部マイルスじゃん!!!

 

まさに帝王だよね。僕はボストンにいたとき、一回マイルス・デイビスをライブハウスで見たことがあるんけど、すごいオーラ放ってて怖いくらいだったよ。

 

マイルス・スクール 

 

マイルス・デイビスのもうひとつの功績は、多くの後進を育てたことでした。

自分の音楽を追究し続けながら、多くの素晴らしいミュージシャンをメンバーとして発掘し、世に送り出したマイルスのバンドは、「マイルス・スクール」と呼ばれています。

ビバップのコード進行による芸術表現を頂点にまで高めたビル・エバンスや、コルトレーン・チェンジと呼ばれるコード進行を発明したジョン・コルトレーンをはじめ、ハービー・ハンコック、キース・ジャレット、チック・コリアといった、ジャズ界に大きな影響を与えたプレイヤーたちの多くが「マイルス・スクール」を卒業しています。

「マイルス・スクール」の卒業生たち、その影響を受けたひとたち、もちろん受けていない人たちによっても、ジャズは今なお、枝分かれし、進化して、そのジャンルも増え続けています。

 

ジャズってなあに

 

これでジャズ史のお話はひとまず終わりです。もし興味があったら「JAZZ TREE」って画像を検索してみると、ジャズの系譜を絵で描いたポスターがいろいろ出てくるよ。

ワイ、もうおなかいっぱいや。結局ジャズって何だったのかわかるようでわからへん。

 

そう、だからジャズとは何かって聞かれても、僕もひとことでは答えられないんだ。アドリブがジャズの特徴かというと、アドリブのないジャズもあるし、リズムもハーモニーもどんどん変わるしね。黒人音楽がルーツの音楽がジャズだと言ってしまうと、ロックもジャズになるからね。だからこうして、一番最初にジャズの歴史を振り返ってみたわけだけど・・

 

ジャズじゃない音楽を消去法にしたほうが早いと思うやで。

 

それだとまずジャズじゃない音楽がどれかわかっていなくちゃいけないよ

 

もう自己申告制でいいよ!!ジャズって言い切ったものがジャズ!!

 

国王陛下の国政ぶりがよくわかる素晴らしいご提案をありがとうございます

 

 

バチカブリ国王に贈賄のお願い

いつもありがとうございます。

この記事を気に入って下さった方、国王にもっとジャズを勉強してほしいという方がいらっしゃったら、贈賄していただけると、おやつを食べたりマンガを読んだりして味をしめたバチカブリ国王の勉強に身が入ります。

権力にはなびかない市民派の方は、「下僕へ差し入れ」とメッセージ欄に書いていただけたら、国王には内緒で下僕の柴田コウメイに届けられます。


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